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禁止改定に寄す

Magic: The Gathering

新セット『霊気紛争』の発売にあたり、現環境の禁止カードが発表されました。スタンダード環境では新セットとその周辺のラインナップでデッキが構築されますが、広いカードプールでカードが使用できるモダンやレガシーなどのいわゆる「下環境」では、どんな強力なシナジーが発生するか分からないため、だいたいカードが使われてから禁止・制限が発表されます。しかし今回は異例なことにスタンダード環境で3枚もの禁止カードが発表されました。スタンダードを含めた禁止カードは以下の通りです(制限カード・解禁カードはありません)。

スタンダード
《約束された終末、エムラクール》禁止
《密輸人の回転翼機》禁止
《反射魔道士》禁止

ダン
《ギタクシア派の調査》禁止
《ゴルガリの墓トロール》禁止

スタンダードについて解説します。

基本的に3つのカードは、現環境の主要なアーキタイプのキーカードですので、それらの中核を奪った形になります。一つのデッキタイプに全てのカードが共存しているわけではありません(補足が必要ですが)。

《エムラクール》は13マナを要求する超強力なクリーチャーで、13/13、飛行トランプルプロテクション(インスタント)と、戦闘のスペックだけでもやばいですが、唱えると相手の次のターンをハッキングするというある意味で《Time Walk》よりもやばい疑似エクストラターン能力がついていました。とはいえ13マナですから、普通にしている分にはそんなに見かけません。ところがもう一つさらにやばい能力があって、このカードは墓地にあるカードに含まれるカードタイプ1種類につき1マナ必要コストが少なくなるという能力まで持っていました。このため、通常13ターンかかるところ、素直にプレイしていったとして、最速6マナで出ることがありました(下環境だとさらに1マナ少なくなりえます)。結論から言うとエムラが出たらまあ負けです。一応対処手段はありますが、やばいことは間違いありません。

このエムラクールの能力はスタンダード環境におけるキーワード能力「昂揚」と共振したものです。昂揚とは墓地に4種類以上のカードタイプのカードが落ちていると強くなるという能力で、これを利用した主要なアーキタイプとして「黒緑昂揚」などのデッキがありました。これは非常に有力なアーキタイプで、Tier1からTier1.5をさまよっています。相性のいいエムラクールもまたこのデッキタイプに入ることが多かったわけです。あと少し前の環境では「現出」というデッキタイプにもたまに入っていました。

ということでこれだけでも十分に活躍の場は「約束」されているわけですが、実際にはエムラの暴虐はもっぱら《霊気池の驚異》とのコンボ(ですらないかな……)によるものです。《霊気池の驚異》は4マナのレジェンダリー・アーティファクトで、タップして6エネルギー支払うと、デッキを上から6枚カードをめくることができて、そのうち選んだ1枚をマナコストを支払うことなく唱えてもよいという能力を持っています。したがってエムラも唱えることができます。エネルギーという概念で混乱があると思いますが、《霊気池の驚異》が素出しできる4ターン目までに6個以上溜まっていることは、そのためにチューンしたデッキであればかなり期待できる、というニュアンスのものです。上からめくった6枚にあるかどうかにランダム性があるものの、したがって、6マナで出るにもやばいのに、13マナのエムラが4マナで唱えられるという状況がしばしば(というかかなり)あったわけです。この《霊気池の驚異》デッキは、色組み合わせのバリエーションこそ多様ですが、まごうことなきTier1デッキとしてスタンで猛威を奮っています。

こうしてみるとエムラよりも《霊気池の驚異》の方が有害に見えるのですが、一応エムラを除外しても《霊気池の驚異》デッキは《絶え間なき飢餓、ウラモグ》などの存在のおかげで、かなり適切にパワーを抑制できる感じがするほか、今回のセットのキーだったエネルギーという能力をスポイルせずに行う対処としてはまあ妥当なのかなという印象を持ちました。昂揚系のデッキでもエムラはフィニッシャーとして振る舞っていましたが、昂揚には実はほとんど問題ありませんので、むしろ前のめりになった昂揚アグロなどが存在感を出してくるかもしれません。あとはまあ、下環境ではこれくらいやばいでかい生物はそこそこいて、特にこれを新エムラとしたとき、旧エムラと呼ばれる《引き裂かれた永劫、エムラクール》は、MTG史上最強のクリーチャーといってもさしつかえなく、しかもかなり活躍しているので、エムラならオーバースペックなテキストが書いてあってもしょうがない(というかそうであるべき)という人情が多くの人に湧いてあったところではないでしょうか。ただこの禁止によってモダン以下で活躍する可能性が増えたかというと別に無い気もするので、新エムラの命脈はトーナメント的にはしばらく絶たれたかなという印象です。

さて、今後活躍するかもしれないアグロというデッキタイプの中で超重要な役割を果たしていたのが《密輸人の回転翼機》、通称コプターでした。これは2マナのアーティファクトで、パワー1のクリーチャーがいると「搭乗」という能力で3/3飛行のクリーチャーになれます。その上、攻撃かブロックに参加すると、1枚カードを引いて1枚捨てるという能力(ルーター能力)が使えます。エムラと比べると能力が地味ですが、これは「でかい生物強い!=トップレア」と思いがちな初心者のマジックあるあるともいいますか、3/3飛行と13/13追加ターンとなると後者が強いに決まっているように見えて、実際には初動2ターンで登場するこのカードの方がちょっとやばいというのが大方の認識です。

このカードがどうやばいかをせっかくですから解説しますと、まず無色2マナなので、生物を出して殴るあらゆる色のデッキに入ります。本質的にはこれがやばかった。このため、ある時期のアメリカの1000人くらいの規模の大会では、ベスト8デッキ全てにコプターが上限4枚搭載(計32枚)されているというやばい状態になっていました。これは枚数上は客観的にいって禁止or制限を受けるレベルです。最近こそTOP8に32枚という状況はありませんが、それは他がエムラデッキだからということが非常に多く(極稀に他のタイプが1〜2人くらい入っていることもあるかないかという感じです)すでにここまで挙げた2枚のカードの禁止理由は明らかですから、QEDこれにて解説終了でもいいくらいですがもう少し続けます。

コプターがやばいのは能力がかみあっているというところです。もし相手にブロッカーがいたら、いかに有益なクリーチャーでも相打ちするかもしれないのでなかなか殴りにいけません。ところが、コプターは飛行を持っているので、比較的気楽に殴りにいけます。そうするとルーター能力が起動できます。ブロッカーがいないと、相手のプレインズウォーカーを攻撃しやすいです(プレインズウォーカーはもう一人のプレイヤーみたいなカードタイプで、出るとすごく強いものばかりです)。しかも、搭乗するクリーチャーは召喚酔いしてても関係ないので、2ターン目にコプター、3ターン目に何か生物→搭乗という動きがシームレスにできます。搭乗用の生物がいないことがネックですが、生物の調達を期待しやすいわけです。そして問題がルーター能力ですが、マジックでは初手の手札がよし悪しが大きく展開を左右するところがあって、マリガンという手札引き直し制度があるわけですが、これを使うと1回ごとに引ける枚数が減っていく(初期7枚)ので多用できません。ところがコプターがあれば、少なとも土地カードばっかりのランドフラッド状態はある程度許容可能です。なにせカードを交換すればいいわけですから。この能力が"事故"の解消という観点から極めてバカになりません。さて、このコプターですが、とりあえず除去してしまえば3点ダメージと一回だけの能力起動ですみますが、なかなか都合よく除去をたくさん積むことができないという悩みもあります。ではどうしたらいいか。……そういえば飛行でブロック時にルーター能力を起動してくれるうってつけのカードがあったじゃないか。そうコプターです。ということで自分も相手も4枚コプターを積むことになりました。

コプターは本当にあらゆるデッキに積まれました。機体をフィーチャーした白赤機体を中心とする機体デッキではもちろん、Tier1である青白フラッシュや黒緑昂揚にも積まれました。というか積んでないデッキを数えた方が早くて、それは赤緑エネルギーや青赤コントロール(t白、t黒含む)、コロッサス、機械医学的召喚など、数えられるレベルです。そしてこれらの多くのデッキが、非コプターデッキの最右翼である霊気池の驚異と相性が悪い傾向にあり、スタンダードはかなり強固な三竦みに入ることとなりました。

コプターの禁止はしょうがないという気持ちがある一方で、よくもまあしかしレアリティ:レアのカードを禁止にしてくれたなという気持ちも強いのが大方の感想ではないでしょうか(なおエムラは神話レアという上位のレアリティです)。しかもこのカードはカラデシュに入っていたもので、これは3ヶ月少々ほど前に出たばかりの現状最新セット封入のものです。それがメインのフィールドであるスタンダードで禁止となると、なんで禁止しやがったと思うのは無理もないでしょう。最近、スタンダードを盛り上げるテコ入れとしてスタンダード・ショーダウンという特別バック配布の企画をやっていましたが、コプターはその中に入りうる目玉レアの一つだったような気もしますし、どうなっているんだという気持ちは強まります。しかもトーナメントの状況はさっき述べたような感じですから、少しでも強いデッキを使おうと思えば、トーナメントプレイヤーでなくともコプターを使おうとするのに決まっているわけですが、コプターはその人気もあいまって一枚1700円〜2000円くらいの価格で取引されていました。この価格は微妙なところで、もしコプターが神話レアだったら8000円を超えていただろうというニュアンスです。だからまあ禁止にしてもそこまでやばくもないじゃんとも言えますが、セミトーナメントプレイヤーみたいな人が1枚2000円前後出して4枚購入したカードが禁止されたら、マジックを辞めてもおかしくないよなーと思います。私は結構ショップにいって遊ぶことが多いのですが、カラデシュが出たので新規にマジックを始めたというプレイヤー何人かとマッチアップしたことがあり、彼らがSCGの大会結果を参考に白赤機体を組んでいたのを思い出します。最大の売り上げを記録しただろうタルキールブロックが落ちて(そして後述のカンパニー問題とも関連して)マジック界ではスタンダードプレイヤーがかなり減ったとされているのですが、そんな中で(大した数ではないかもしれませんが)カラデシュから参入した奇特なプレイヤーを振り落とすような真似は正直どうなのかなという感じがしています。せめて1枚制限カードにすればよかったのではないかなと思いますが、その結果トーナメント運営などにどれくらい面倒が生じるかについてはほとんど思考を巡らせていません。しかしこの件については次のPTだけ禁止してその後は戻すというもっとやばい対症療法が予感されるのですがそれについては後述します。

スタン最後の禁止カードは《反射魔道士》です。これは前記2者と異なりアンコモンなのでまあ禁止してもよいかなという感じがします。しかし「なぜこのカードなの?」という疑問が生じるカードでもあります。というのも、これはマナコスト的にあらゆるデッキに入るカードでもなければ、ゲームを破壊するコンボのパーツというほどでも(ギリギリ)無いからです。これは、召喚されたときに相手の場の生物を手札に戻させ、そして同名のカードは次のターンは召喚できないという制約を貸す強力なカードです。ですがこのカードは単体でどうこうというよりも、搭載されたアーキタイプとの兼ね合いで評価しなければなりません。

《反射魔道士》を搭載した現環境のアーキタイプは白青フラッシュで、浮き沈みはありますが現環境最強、まごうことなきTier1と言っても一応過言ではない活躍を見せています(そして白青フラッシュはコプターを4枚積んでいます)。とはいえ《反射魔道士》は、いれば強いけどいなくても必ずしもアーキが成立しないというほどではないし、サイドでは抜くことも多いカードです。《反射魔道士》と同じ3マナ域には《呪文捕らえ》がいる関係で、《反射魔道士》は3枚に押さえられていることも多く、評判が悪いストレスフルなカードであるとはいえ、禁止するほどではないと思います。

そもそも多くのプレイヤーは「何で今禁止にした?」→「何で"もっと前"に禁止しなかった?」と思っています。それはこのカードが前環境でもっとも評判の悪かったバントカンパニーと呼ばれるアーキタイプに積まれて猛威を奮ったからです。バントカンパニーはひどかったです(実感)。ただ、たまたま頂点を押さえたデッキが白緑トークンだった(どのトーナメントでもなぜかこのアーキが優勝していた。それもやばい話ですが)ため、なんとなく生存が許されていたわけですが、本当は許されてはいけなかったとみんなが思っていたはずです。GPリミニではトップ8のうち6人がバントカンパニー、残り二人は青赤バーンということがありました。同じカードがトップ8に32枚いてヤバいというのは確かにヤバいのですが、コプターは複数アーキにまたがって使用されていたため枚数が多くなったという点にはある程度注意が必要です。昔、スタンダードでMtg最強のカードの一角とも目される《精神を刻む者、ジェイス》と、その相棒である《石鍛冶の神秘家》がまとめて禁止(BAN)されたことがありましたが、これは要はこの二つを4枚搭載したCaw-Bladeというアーキタイプがトップメタにひしめいてしまったからです。色拘束などの関係で、これらのカードを使ってなお違うアーキを、という流れは難しかったわけです。そしてこれらのBANが妥当だったことはだいたい多くのプレイヤーが納得していそうに見えます(レガシーでも"青白石鍛冶"としてそのまま主要なアーキの一角を占める強力な組み合わせです。なぜスタンにほぼそのままの形であったのか)。

バントカンパニーがヤバいデッキだったことは間違いないのですが、そのダメな感じは競技シーンというより草の根に対しての悪影響にあったのではないかと感じます。私もGP東京などに白緑トークンで出たのですが、そのときはたまたまバントには1回しか当たらないくらいの分布だったのですが、店舗大会に継続的に出るようなプレイヤーにはバントカンパニーを使っている人が多く、生半可なデッキではこれに対応できません。そうすると遊んでて楽しくないからやらなくなっていっちゃうんですよね。という声を店舗の大会で当たったプレイヤー複数名から聞きました。しかもカンパニーこと《集合した中隊》は、『タルキール龍紀伝』というスタン落ちする直前のセットだった上、しかも一時は1枚1万円(!)くらいした《ヴリンの神童、ジェイス》というカードを2〜4枚装備していたのですが、これまたスタン落ち直前の『マジック・オリジン』のカードだったため、環境後半にこんなカードを買い求める気持ちにはまあなれないわけです。そうするとこれらのカードを持ってるスタン古参(というのも変ですが…)のプレイヤーに一方的に途中参加ないしカジュアルのプレイヤーはボコられるということになってしまい、まあやる気も無くなっていく流れになりました。

さて、このデッキの中で《反射魔道士》はどういう位置づけかというと、強いは強いのですが、カンパニーデッキの代えがたい中核とまでは言えません。というのもカンパニーの3マナ以下は、シチュエーションさえ適切ならどれもこれも強いカードばかりです。強い3マナ以下のカードがいきなり2枚出て来るという点でカンパニーはやはり壊れた働きをしています。逆にいえば、そのせいで反射は禁止を迫るほどの目の敵にはされなかったわけです。正直にいえば、相手の行動を継続的に制限(召喚した生物を手札にもどし、次のターンはキャストできない)する点で《反射魔道士》はマジでウザく、カウンターを弱めてクリーチャーの殴り合いを促進するという、いわゆる"近代マジック"の方向性を推進してWotCのことを思うと、方針間違えてんじゃねーのという感じは拭えません。もちろん《反射魔道士》はクリーチャーだから本来はソーサリータイミングでしか場に出ないのですが、そのルールを見出したのがインスタントである《集合した中隊》だったわけです。したがって《反射魔道士》を禁止にするなら1年前にしやがれ、もしくはコプターを禁止にするならなんでカンパニーを禁止にしなかったんだ、というのが多くのプレイヤーの考えるところになります。

こうできなかった事情にはセットのローテーションの二度に渡る変更が尾を引いています。もともとスタンダードというルールにおいては、使えるのが最大2エキスパンション(6セット)+2基本セットの都合8セットということになっていました。これが一昨年のもろもろの変更で都合6セットに狭まり、かつ半年ごとに2セット使えなくなるというリズムに変えられました。前はもっと長く使えたわけで、新カードの購入を強いるこの方針変更がプレイヤーに大きな負担を与えたことももちろん自明です。実際カードの売り上げが大幅に減ったという情報が各所から出ていますし、私自身も新イニストラード以降BOXを買わなくなりました。それに加えて上記のスタン・シーン上の問題があったわけですが、さて話を戻すと、昔のルールだと『カラデシュ』直前まで『タルキール覇王譚』『運命再編』のカードが使えたわけです。ところでこのローテルールは去年あまりの不評に撤回されたわけですが、このことによって『タルキール覇王譚』『運命再編』は不当に半年ほど利用期間を短くされたわけであり、しかも『タルキール覇王譚』はフェッチランドの再録という大ニュースによって恐らくMtG史上最大の売り上げを出したと推測されるので(もしくはZendikar Expeditionを搭載した『戦乱のゼンディカー』)、そこで入ってきた新規ユーザーも相対的に多いと想定される中、そういった人たちの遊技機会を恣意的に奪ったと言える点はいかがなものか、とこうして整理している中で思えてきました。そういう不誠実さがそれ以降のセットの売り上げに反映しているのだとすればそれはむべなるかなと言わざるを得ません。もちろん営利企業なので利益を追求するのは当然かつ結構なのですが、プレイヤーも個別の生計を営んでいる人間であって、特にカードゲームは(貴重なことに高齢化が進むMtGプレイヤーであってすら)10代〜20代前半のプレイヤーが中心だということを考えれば、ローテの変更や基本セットの廃止がプレイヤーたちのニーズなどと対話した結果のスキーム変化にはとても思えなかったですよね。制度変更が発表されたときのマローのリリースを見たときも同じことを思いました。ていうかプレイヤーにとってはネガティブな変化をさもポジティブな変化であるように述べるのはちょっと……っていう風に思うのですが、リリースは英語からの翻訳だから仕方ないですかね。ーーで、話を戻すと、『覇王譚』『再編』は《包囲サイ》などを代表にカードパワーの高いカードがいくつもあり、白緑トークンは息を出来なかった気もしますが、バントカンパニーが環境を不当に抑圧するということは無かったでしょうし、カンパニーやジェイスを買いたいという人が一応買ってもいいくらいの期間が確保できた気もしますね。ジェイスは高すぎますけど。っていうか、スタンカードのシングル市場での高騰は別問題としておっきく存在しています。


というわけで《反射魔道士》は生物殴り合いを進めるWotCの方針からすればうざいカードですが、現状ではそこまで重要な禁止対象とは思えません。しかもコプターまで無くなってしまった以上、白青フラッシュをそこまで咎めるべきという感じもしません(というか咎めないべきです)。にもかかわらずこのカードが禁止されたのはむしろ次環境のカードとの兼ね合いがありそうです。『霊気紛争』では場に出たときに対象のパーマネントをブリンクさせる《守護フェリダー》というアンコモンカードが発表されました。この結果、『カラデシュ』のプレインズウォーカー《サヒーリ・ライ》が、それまで500円くらいだったのが、2500円くらいまで高騰するような注目をされました。サヒーリの-2能力は、特定のクリーチャーを速攻持ちのアーティファクト・クリーチャーとしてコピーするもので、これを使ってフェリダーをコピーすると、そのETB能力でサヒーリをブリンクし、サヒーリの能力を再び起動することができます。新しいサヒーリでもう一度フェリダーをコピーすると、このプロセスが無限に繰り返せることが分かります。そしてコピーされたフェリダーは速攻ですから、いきなり一万体のフェリダーで攻撃できるわけです。一撃でゲームを終わらせることができるコンボで、この同型コンボはかつて《欠片の双子》コンボとしてモダンで隆盛をし続けました。が、とうとうモダンでも一年くらい前に禁止されました。なお私は禁止の一週間前に双子を3枚買いました。余談です。ところでサヒーリは青赤のカードですがフェリダーは白です。したがってこのコンボを搭載したデッキはトリコロール/ジェスカイ(白青赤)に確定します。とすると白青の《反射魔道士》も搭載される可能性が極端に上がるわけですが、確かにサヒーリで反射をコピーし始めると、相手が生物デッキの場合、ほとんどゲームにならないかもしれませんね。とはいえ、この二者は別にこれまでも共存していたので、本当にそれが理由で禁止するとなるとマジかよって感じがしてきますが、逆に言うとそれくらいしかとりあえず禁止の理由が思いつかないので、無理やり気を回すとこれが根拠の一つかなという印象です。もしくは、白青フラッシュにサヒーリとフェリダーを搭載したトリコフラッシュなどをデッキとして想定した際にうざすぎるということでもしかしたら規制したのかな……という気もしますが、いずれにしてもなんだかスッキリしませんね。

ですが本当にヤバいのはアナウンスに含まれた次の記述です。

次回禁止制限告知:2017年3月13日

 禁止制限告知は、スタンダードで使えるセットのプレリリース後の月曜日と、プロツアーの5週間後の月曜日の両方で行われるようになります。

これは2/3〜2/5にかけて開催されるプロツアー『霊気紛争』の一ヶ月後、そして一般プレイヤー向けのイベントである2/11〜2/12のゲームデーの約三週間後に禁止改定されることを意味しています。通例、禁止改定は新セットの発売と同期してなされます。ところが、今回の禁止改定告知期間は明らかに短いです。例として昨年同時期の告知を示しますと2016/1/22告知で、次の告知日は4/4となっています(http://mtg-jp.com/publicity/0016309/)。今回の発表では、告知が一週間早く、そして次回の発表が20日早まっています。それから今回の発表はプレリリース後の月曜日ではありませんね(今回は含まないということなのかもしれませんがだとしたらいつもどおりにすべき気もしますね。変更事項が多すぎます)。

この日程からプレイヤーが感じるのは、頻繁に禁止改定を仕掛けられるのではないかという恐怖です。多くのプレイヤーは構築デッキのために(トレーディングではなく)シングルカード売買を利用してカードを調達しています。当たり前ですが安いうちに買いたいし、安かったものが高騰したらこれは買い控えをしたくなります(『イニストラードを覆う影』まではマジックバブルだったため、高くなったら「もっと高くなる前に今買う」というインフレターゲット的消費行動が起きていたようですが、今やその傾向はかなり弾けました)。ところで、現環境で定評のあるカードの多くが禁止によって使えなくなりました。しょうがないから新環境に対応したカードを調達しようか新セットも出るし、と仮に思ったとして、そこで今購入したカードが禁止されたらどうしようと思って買い控えることは十分にありえる話です。もう少しリアルに言えば、『霊気紛争』のカードがこのタイミングで禁止される可能性は極めて低いですが、一方で今回禁止されたエムラやコプターなどが"解除"される可能性が十分にあるわけです。となると、このタイミングでほぼ同型の《キランの真意号》などを果たして4枚買えるかというとかなり難しい。このカードはもともとは5〜600円のオーダープライスでしたが、コプター禁止の報に際して、一気に2000円以上、大体2600〜3200円くらいの価格帯になり、しかも品切という状態になっています。このカードはコプターと違い"神話レア"なので、絶対数の少なさからコプターよりも値上がり率が高くなります。また、レアではなく神話なので、カードセットをBOX購入して自引きすることで4枚集めることもかなり難しいです。高騰していてもさすがにシングル購入した方が安いことになります。あまり高くなりすぎるとBOXを購入した方がよいとなり、実際《ヴリンの神童、ジェイス》が最高値だった頃の『マジック・オリジン』などはそんな感じになっていました。ただそれでも1BOXに1枚入っていることが確約されているわけではないのですが……。

 私たちはこの変更を、私たち自身とプレイヤー・コミュニティに、組織化プレイを健全で楽しいものにするための高い柔軟性を提供するために行います。私たちはこの発表の時期によって最も直接影響を受けるプロツアーのプレイは、マジックのプレイのほんの一部であると認識しています。フォーマットの不均衡によって最も影響を受けるのは、告知と告知の間に起こる種類のプレイ――フライデー・ナイト・マジック、グランプリ、地元のイベント、Magic Onlineのイベント、プロツアー予備予選(PPTQ)やプロツアー地域予選(RPTQ)であり、友達と家でフォーマットのルールにしたがってプレイするものさえもそうなのです。
 したがって私たちは、マジックのプレイヤーの大多数に最高のサービスを提供するために、セット中間の告知時期を追加して、これら無数のイベントでの経験が最高のものになるようにします。
 これにより禁止・制限される(もしくは解禁・制限解除される)カードが増加するとは考えていませんが、この優れた柔軟性によりプレイの問題をより迅速に解決できるようになります。

で、上記の事情から、プロツアーを挟んで禁止改定を2回行うことを、プロツアーを主戦場とするプロプレイヤー以外のプレイヤーコミュニティに対する利益であるかのようにリリースでは述べられているわけですが、何度も言うようにシングルカード購買がカード調達の重要手段である以上、その値動きに大きな影響を与えるプロツアーの結果は非常に重要であって、この感じだと、3/13までカードを買い控える層が出ることは間違いないですし、その流れでフェードアウトするプレイヤーも存在しうるでしょう。もちろん適当に買ったパックやドラフトで出てきたカードを継ぎ足して遊ぶという「マジック・リーグ」的なやり方で遊びつなぐ方法・スタイルもあり、牧歌的で美しくもありますが、それをプレイヤー・コミュニティの中核として考えるのはさすがに本末転倒でしょう。そうなると、プロキシーを使うのでなければ単に遊ぶ機会が減るだけで、PWPを付与される店舗大会に出にくくなることを考えるとさらにデメリットが増してきます。そもそも禁止改定の機会がレギュラーに増えている時点でちょっとどうかなという感じであって、「禁止カードが増えるとは考えていない」というコメントはほとんど無意味であり、禁止改定の機会が増えるということは禁止されるカードの潜在的枚数が増えるという意味でしかないでしょう。もちろん、禁止改定の機会とは別に本当にヤバイ奴らはすぐに改定されるわけですが、だとすればレギュラーな禁止改定サイクルは据え置きでよいはずですし、プレイヤーコミュニティ的にもその方が納得度が高いのではないでしょうか。むしろ使えるカードセットを増やして、メタの回転を高めた方がよいのであって、スタン期間を戻したという去年の決定こそがもっとも有効だったという感じがします。

ともあれ今回のスタンの禁止改定はスタンのローテーションを変更し、再び戻したことに伴う煽りを受けての事案だったという感じがしています。そのため、その帳尻合わせをするための処置としてはしょうがないかなという感じですが、PT霊気紛争後の改定でどういう動きがあるか判明するまでは安心できません。最も良いのは動きなし(今回禁止になったカードはそのまま禁止)ですが、それ以外の場合にどう影響が出るかはそのとき考えたいと思います。またその場合、高額レアとして取引されながら半年弱で使えなくなった新エムラ、そしてたったの3ヶ月で使用を制限されたコプターに対する補償をWotCがどう考えるかも重要なことだと思います。値動き自体はモダンやレガシーの方が当然やばいのですが、トーナメントシーンが存在するレギュレーションの場合、カジュアル用のカードと頻繁に使われるカードの間では市場価値に明確な差があって、スタン需要のカードがほとんどの場合下環境では使われないことを考えると、スタンでのカード禁止というのは極めて重大なカード価値の毀損なのであって、慎重なカードデザインが必要なのは努力目標としてそうであるにしても、事後的にもなんとかしてほしいですよね。昔は禁止カードをパックと交換してくれる制度がアメリカではあったらしいですけど、まあそういうのもありだと思います。

なおモダン以下の禁止はそりゃそうだよなと思うので、最近SCZを回したりドレッジを組んだりしていた僕はでありますが受け入れています。みんな受け入れている感じもします。


参考
http://mtg-jp.com/publicity/0018224/